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パームオイル

背景

最も広く使用されている植物油であるパームオイルは、包装食品やパーソナルケア製品、バイオ燃料など、すべての消費者向け製品の約半分で使用され、世界的に取引されている農産物です。 パームオイルはアブラヤシの果実から抽出されます。 パーム核油(PKO)はヤシの実の核または種子から得られます。

パームオイルは次のようにさまざまな理由からとても人気があります。

  • 高温下でも安定的
  • なめらかでクリーミーなテクスチャで無臭
  • 製品の保存可能期間を延ばす天然の保存効果がある
  • 他の作物の半分の広さの土地で同じ量の油を生産できる

パームオイル需要の高まりは、森林伐採や生息地破壊、生物多様性の喪失など、環境と社会に計り知れない影響を及ぼしています。

上述の通り、他の植物油はより広い土地を必要とし、より深刻な森林伐採をもたらす可能性があるため、パームオイルから他の植物油に切り替えることはできません。 さらに、インドネシアやマレーシアなど、パームオイル産出国では、何百万人もの農業従事者やその家族が生活をパームオイル産業での仕事に依存しています。

パーム行動計画

エスティ ローダー カンパニーズ(ELC)では、「森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロの方針(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)」(2020年発表)に基づき、パームオイル由来の原材料(パームオイルとその派生物)に対し、コモディティに特化した次のような行動計画を作成しました。 本計画はELCが直接購入するすべての原材料を対象とし、すべての調達地域と業務、およびパームオイル由来成分の調達先に適用されます。

ELCは他の分野と比較してパームオイル由来成分の使用量が少ないながら、持続的で倫理的なパームオイル由来の原材料サプライチェーンを構築するため、具体的な行動計画を打ち立て、サプライヤーと協力しています。

ELCでは、次の3つの主要分野において、パームオイル由来成分の責任ある調達を進めていくことを目的とした現在の方針と手順に基づいて取り組んで参ります。

  • 持続可能な調達
  • モニタリングおよび透明性
  • コミュニティへの関与

持続可能な調達

私たちは、ELCのサプライヤー行動規範およびNDPEポリシーに記載される原則の遵守を証明できるサプライヤーから原材料を調達することにより、地域コミュニティと環境に配慮し、責任ある持続可能なパームオイル由来成分の調達に努めています。 また、サプライヤーの遵守実績やトレーサビリティの強化、持続可能なパームオイルのための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil:RSPO)の原則と基準に関する第三者認証制度を通じて、これらの責任ある調達方針の遵守を評価しています。 RSPOの原則と基準に従い、サプライヤーに遵守が義務付けられている持続可能なパームオイル由来成分の調達原則には次のものがありますが、これらに限定されるわけではありません。

  • 森林伐採ゼロ、転用ゼロ
    • 土地の開墾による森林伐採や、高炭素貯留(HSC)、保護価値の高い(HCV)森林を保護、育成するエリアの自然破壊を禁止しています。 保護対象区域内でHCVおよびHCSを特定し、保護、または育成します。1
    • 深度を問わず泥炭地の開拓ゼロ2
    • 新たな植林や再植林のための焼畑ゼロ1
  • 先住民および脆弱な地域社会の権利の保護と促進を確実に行うための自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)
  • 強制労働、ハラスメント、差別を一切排除し、安全な労働環境を確保しながら人権を保護します。

2015年以来、ELCでは、製品のために使用するパームオイル由来成分100%をRSPO認証供給業者のサプライチェーン、RSPOブックアンドクレームまたは小規模農業従事者クレジットから調達しています3。 2019年には、2025年までに、パームオイル由来成分3の少なくとも90%は、RSPOの物理的4サプライチェーンから持続可能であると認証されたものを使用すると発表しました。

ELCは、次の方法により、パーム原料の持続可能な調達を加速する予定です。

  • 2025年までに、パームオイル由来成分3の少なくとも90%は、RSPOの物理的4サプライチェーンから持続可能であると認証されたものを使用するという目標達成に向けて、継続的にサプライヤーの生産能力を高めように尽力する。
  • 「森林破壊ゼロ、泥炭地ゼロ、搾取ゼロの方針(NDPE)」とパーム行動計画に関する研修を、ELCがパームオイル由来成分を直接購入しているサプライヤーおよび関連の外部メーカーに提供する。
  • 2021年に主要なパーム原料サプライヤーに対し実施した、業界の方向性に基づき調整した持続可能なパーム原料調達評価の結果に基づき、優先的なサプライヤーを発表し、継続的な改善を促進していく。

モニタリングおよび透明性

ELC は、業界全体の活動を通して、パートナーやサプライヤー間にサプライチェーンの透明性や安心感を構築することで、持続可能なパーム原料調達を継続的にモニターします。

エスティ ローダー カンパニーズは2019年、透明性、リスク モニタリング、評価に関するアプローチを調和させるため、複雑なパームオイル派生物のサプライチェーンの責任ある調達に取り組むことを目的としてブランドとサプライヤーが連携する、持続可能な派生物のための行動(Action for Sustainable Derivatives:ASD) の創設メンバーになりました。 ASDでのメンバーシップを通して、ELCはパームオイル由来成分が調達基準を満たしていることを供給業者が証明し、協力して申し立ての内容をモニタリング・解決できるよう、サプライチェーンにおけるトレーサビリティシステムの開発に取り組んでいます。 ELCのパーム原料の搾油工場までのトレーサビリティシステムの開発に関する最新情報は、当社が毎年発行している企業市民&サステイナビリティレポートでご確認いただけます。

また、ASDでのメンバーシップを通して、ELCは申し立ての内容を共有するダッシュボードを使い、トレーサビリティシステムを擁したサプライチェーンを動的にモニターしていきます。 申し立ての内容を立証する証拠が見つかった場合、当該申し立てを、業界と協力し、またはELC単独で、レビュー、調査、対処して参ります。

当社は、以下の方法で継続的に監視および透明性の向上に取り組んでいきます。

  • パーム原料サプライチェーンに搾油工場、またはそれ以降のダウンストリームでのトレーサビリティシステムを実現することにより、サプライチェーンにおけるトレーサビリティを向上。
  • ASDとのパートナーシップを通じて業界との連携を図る。
  • 必要に応じて、リスク、申し立ての内容、および継続的改善計画に関係各社と協力して監視する。

地域社会への関与

300万人以上の小規模農家が世界のパームオイルの40%以上を生産し、これに依拠して生計を立てています。5これらの小規模農家は、市場へのアクセスや資金調達が限られ、農業ベストプラクティスに関するトレーニングが不足しており、大きな課題に直面し、これが生産性の低下につながっています。 インクルーシブで持続可能なパームオイルの調達に関する課題に効果的に取り組むには、政府、市民、地域社会、民間企業間のコラボレーションが必要です。

ELC は、小規模農業従事者がパームオイル原料のサプライチェーンに参加できる機会を増やすという目標を掲げ、生産量増加と生活の質の向上を支援することで、小規模農業従事者の支援に取り組んでいます。 次のようなイニシアチブがあります:

ランプンプロジェクト

2019年、当社は、インドネシア・ランプン省の1,000の小規模農家を擁するコミュニティを作り、パームオイルを持続可能な方法で生産し、収入と生活の質を向上させるため、Solidaridad(世界的NGO団体)、BASF(長きに渡るELCのサプライヤー)、RSPO、Business Watch Indonesia(BWI)、Indonesian Agency for Agricultural Extension(現地農協)と協力して、ランプンプロジェクトを立ち上げました。 詳しくはこちらをご覧ください。

Mosaikイニシアチブ

エスティ ローダー カンパニーズ慈善事業財団は2020年、持続可能な派生物のための行動(ASD)が、優先順位の高い生産環境に大規模かつポジティブな影響をもたらす革新的な合同運用資金制度をスタートさせるにあたり、資金援助することを承認しました。 この資金は、 NGO パートナー「Institut Penelitian Inovasi Bumi(Inobu)」率いるカリマンタン中央部での持続可能なパームオイル生産と環境管理・復元のための実証済み管轄認証アプローチ「Mosaikイニシアティブ」を広げていくために使用されます。

RSPOからインデペンデント・スモールホルダー・クレジットを購入

パームオイル関連事業にポジティブな影響をもたらすための各種プロジェクトに加え、RSPOからインデペンデント・スモールホルダー・クレジットを購入し、小規模農家の市場への直接アクセスをサポートします。

ELCでは、インクルーシブかつ持続可能なパームサプライチェーンを実現するため、次の方法により当社の影響力を広げ、強化できる機会を今後とも模索して参ります。

  • 小規模農家の生活の質を向上させ、環境を保護し、パームオイル原料の調達で損なわれた分以上の環境を復元する関連パートナーシップやプロジェクトへの継続投資(スモールホルダー・クレジットの購入を含む)。6

説明責任への取り組み

ELCはこの取り組みが1つの旅であると認識しており、今後もパートナーおよびその他の利害関係者と力を合わせてベストプラクティスを発展・確立して参ります。 また、RSPO認証を受けた持続可能なパームオイル由来成分の調達量、トレーサビリティ、地域社会への影響プロジェクトなど、優先分野に関する進捗状況を毎年皆様と共有し、更新していきます。

ELCの目標達成度に関する最新情報は、毎年発表しているCitizenship & Sustainability報告書およびRSPO Annual Communication of Progressをご覧ください。

12005年11月以降、保護価値の高い(HCV)森林を保護・育成していくため、特に保護が求められている森林またはエリアでの土地の開墾は行われていません。 2018年11月15日以降、HSCやHCV森林での土地の開墾は行われていません。
2 2018年11月15日以降
3外部メーカーが調達した成分など、エスティ ローダー カンパニーズが直接調達していないパームオイル由来成分、および関連のELCシステムにまだ完全に統合されていない買収先一部ブランドは除きます。
4物理的サプライチェーンとは、マスバランスやアイデンティティプリザーブド、セグリゲーションの制度を使い、認証を受けた農園からパームオイルを調達することを指します。 RSPO認証サプライチェーンに関する詳細はこちら
5 https://www.rspo.org/smallholders
6 パームオイル由来成分の調達フットプリントは、2019年にELCが直接購入したパームオイルおよびパーム核油ベースの派生物の量に基づいて計算されます。 1ヘクタールあたりの推定基本収穫量は、2019年度に米国農務省が発表した「2019 GAIN Report」の「2019年度インドネシアの油料種子および製品に関するデータ(Indonesia Oilseeds and Products Annual 2019)」に基づいて計算しています。